石に似たもの

文:重藤貴志[Signature]

運動不足の解消と気分転換を兼ねて、
できるだけ散歩に出るようにしている。

ずっとPCの前に座っていると、どうしても気分が滅入ってくる。
キーボードを叩き続けていても、筋肉が鍛えられることはない。
ただ肩が凝り、背中が歪み、腰が痛くなってくるだけだ

ちょっと歩きたい気分のときには、
少し離れた川まで足を伸ばすこともある。
この間もふらふらと川まで行き、
ぼんやりとテトラポットの上に座っていた。

流れる水を見ていると、
いろいろな物事の断片が、
頭の中に浮かんでは消えていく。

しばらくして座るだけの時間に飽き、綺麗な石を探すことにした。
無数の石の中から選び出したのは、小さな三角形の真っ白な石だった。
角が丸くなっているのは、水に洗われて角が丸くなったせいだろう。

ひっくり返してみると、藍色の細い線が何本も描かれている。
いつのものかはわからないが、どうやら古い器の破片を引き当てたらしい。
何だか嬉しくなり、それをギュッと握って家に帰ることにした。

ほかの人にとって、それは何の価値もないものかもしれない。
でも、僕にとって、ちょっと手放すには惜しい存在になっている。