気配が消えた夜の記憶
文:重藤貴志[Signature]
年々、季節の移り変わるスピードが上がっていくような気がしている。
子供の頃に待ち遠しかったクリスマスが、あっという間にやってくるようになった。
もちろん、それは年齢を重ねたからで、日々が過ぎていく体感速度は増すばかりだ。
1日は24時間。
24時間は1,440分。
そして、1,440分は86,400秒。
寿命という名の砂時計の中で、一つひとつの砂粒が音もなく落ちていく。
しかも、私たちには残りの砂粒がどれくらい残っているかを知る術はない。
こんなことを考えるのも、冬になったせいだろう。
生命の気配が希薄になっていく季節には、仕方がないことかもしれない。
京都に住んでいたときだった。
ふと真夜中に目が覚めて、あまりにも音がしないため、恐怖に襲われた経験がある。
外の様子が知りたくてカーテンを開けてみると、しんしんと雪が降り積もっていた。
街灯に浮かび上がった青白い景色は、すべてを拒絶するような冷たさに満ちている。
このまま雪が止まなかったら、どうなるのだろう。
真っ暗な空から無数に落ちてくる雪が、美しいというよりも恐ろしかった。
それからどうしたのか、まったく記憶がない。
ベッドへ潜り込んで震えながら眠ったのか、まんじりともせず朝を迎えたのか…。
ただ、あの夜の恐怖感だけは、今でも冬が来る度、はっきりと思い出す。
1日は24時間。
24時間は1,440分。
そして、1,440分は86,400秒。
無数に落ちてくる雪のように、
寿命という名の砂時計の中で、
一つひとつの砂粒が音もなく落ちていく。