砂漠への憧憬
文:重藤貴志[Signature]
一度、砂漠を歩いてみたいと思っている。
ずっと地平線の彼方まで、ただ空と砂の大地しかないという感覚に憧れている。
サハラ砂漠の面積は、アフリカの約3分の1、アメリカの国土とほぼ同じだという。
書物によれば、一言で砂漠と言っても、ずっと同じ景色ではないようだ。
砂丘や砂海と呼ばれる風景は、写真や映像でも見たことがあるが、
そこに立ち、乾いた空気に晒されると、どんな気持ちになるのだろう。
チュニジアで生まれ育った女性に、砂漠に対する思いを話したとき、
ちょっと困ったような、何とも複雑な表情を浮かべていた記憶がある。
その環境が身近にあった彼女にとっては、戯言に聞こえたのかもしれない。
コンクリートとアスファルトで固められた街で暮らしていたからこそ、
想像のなかで、まったく逆に感じられる砂漠に惹かれるのだろうか。
普段は心の奥底に眠っている、砂漠に対する飽くなき憧憬。
僕の“ここではないどこか”は、駱駝に乗って探す必要がありそうだ。