新市街
文と写真:碇本学
境界線を越えるには
いつも勇気が必要だと言われていた
かつての話
勇気を勇気と思わない存在がいたら
旧市街から新市街へ
言葉では通じ合えない気持ちも
おざなりになっていた旧習も
いつでも崩壊して
自分の仕事をしっかりやろう
世界はいつも変わってしまう
てのひらが真っ赤になったことに気づかずに
停留所で止まらないバス
開き続けるコンビニ
繰り返されるメロディ
そっくりな母と娘が手を繋いでいる
天ぷら油が香る夕暮れ
音痴な口笛は届かずに
売り切れになった新発売の惣菜パン
暑さで鱗が逆立った新種の人類
ナイロン袋が溶け出してアスファルト
腰の曲がった老婆とすれ違うベビーカー
伸び始めた前髪が気になっている女の子
明日のデートは晴れるといいね
ポップな散弾銃がぶっ放すカラフルな日常
いつでも どこでも いける
境界線の先の新市街
歩いていく先に咲いた花
ゆれているね
自分のドッペルゲンガーが笑って
知らない女の子と駆けていく
どうか幸せでありますように