土までの距離を思う
文:重藤貴志[Signature]
普段よりも長い距離を歩くと、翌日には足の裏が痛くなる。
最大の原因は、不摂生と運動不足であることは間違いない。
だが、踏みしめる地面の硬さも大きく影響しているだろう。
アスファルトは硬すぎる。
強力に地面を押し固めてつくった平滑な道路は、
極端な言い方をすれば、車輪の転がりやすさを優先している。
もともと人間を含む動物の足は凸凹の上を歩くようにできており、
名実ともに“不自然”な地面からは何倍もの衝撃を受ける。
健康のためにウォーキングやランニングをしていても、
逆に足腰を傷めてしまうのは、そこに原因があるようだ。
たまに芝生の上を歩いたり、走ったりすると、
ふわっとした感触とともに、疲れにくさにびっくりする。
たとえば、美味を追求するあまり、化学調味料を使いすぎると、
頭痛などの体調不良を引き起こす原因になるといわれるように、
人間は自然から離れすぎると、生きていけないのではと思う。
道路に敷設されたアスファルトの厚みは1メートルもないだろう。
それでも、私たちの足は声にならない悲鳴を上げて傷ついている。
今の時代、土までの距離は、どれだけ離れてしまったのだろうか。