時、留まらず

文:重藤貴志[Signature]

年の瀬が迫るにつれ、何かと気忙しくなってくる。
ラジオからはクリスマス・ソングが流れはじめ、
ケーキの予約を急かすコマーシャルが焦りを助長する。

一年が過ぎるのは、どうしてこんなに早いのだろう。
ふと気がつけば、いつの間にか季節は巡っている。

何をしていようが、大晦日は近づいてくるし、
『紅白歌合戦』が終われば、新しい年が明ける。
それは昭和生まれの日本人のアイデンティティーだ。

若い頃は屁とも思わなかった節目というものが、
知らず知らずのうちに大切に感じられるようになった。
厳密に言えば、その瞬間だけを重視するのではなく、
前後の時間まで含めた“流れ”を味わっているのかもしれない。
その証拠に、最近は『ゆく年くる年』が楽しみになっている。

どんなに年月の体感速度が上がったとしても、
結局“流れ”から逃れられはしないのだから、
きっと焦ったところで何の意味もないのだろう。
2018年の終わりは、心安らかに迎えたい。