「こんな時には、何かものを食べることです。それはささやかなことですが、助けになります」

頑なに20年コーヒーの値段を変えていない。消費税が上がったから実質値下げになっている。どうしてか?理由はない。ずっと自分のことばかり考えて自分のためだけに生きていた。夫になり、親になった。それでも自分のことを考えていたように思う。妻は自分に使う時間なんてないっていうのに。

自営業者になり、とにかく食べていくことだけに注力した。幼子がふたりもいるというのに(犬も)仕事のことしか考えていないエゴイスト。家族の生活のためだと大義名分を振りかざしながら。最低だ。今思えば相当追い込まれてたのだろう。そしてそれを一人で背負った気になって、勝手に。

食べられるようになった。子供ふたりも大学生。来年娘は卒業。大分ラクになる。そう20年生活を支えてくれたのはコーヒーを買ってくれた人たち。なんでも高くなって、社会もトゲトゲしていて心がすり減っていくような日々に私が出来ることは。せめてコーヒーを飲むときくらいは穏やかであってもらいたい。そのために出来ること。

必要のないものは。公平であるか?順番は間違っていないか。そして私が差し出せるものは。「ささやかだけど役にたつこと」のパン屋になりたいのだ、私は。ずっと社会の役に立ってこなかったからこそ。遅いかもしれないが、やらないよりはずっといい。そう自分に言い聞かせながら。

コーヒーが誰かの役に立てばいいな。いや、そんなに大きなことではなく、誰かの生活に寄りそうものでありますように。そう思いながら毎日焙煎しています。死ぬ気で仕入れをしながら。ラクしてお金を稼ぐより、誰かの役に立つ人生を選らびたい。って、もっともっと若いときにそう気付けば良かったな(笑)